あるとくぺらせす

小説置き場

リオウルート3

 エドガーがローデンクランツを出て行って数日が経った。
 シモーヌは息子をここまで追い詰めたのは自分だと酷く自分を責め、床に臥せるようになった。
 オースティンはそんな妻の傍らについてやる毎日で、コゼットはメルローデのところへ通い詰めるようになった。

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リオウルート2

「メルローデ! …無事だったか」
「エドガー…」
「ゆうべはお前をひとりにするのではなかった。ずっといるべきだったな」
「あなた…」
「なんだ?」
 何を言っているの? と言おうとしたメルローデは、エドガーは何も知らないことに気づき、口を閉ざした。
 カインや自分が襲われたのは、皆エドガーの母親、シモーヌが仕組んだことだとリオウに聞かされ、メルローデの気持ちは沈んでいた。
 シモーヌはメルローデの両親が生きている頃から親同士の交流があり、ずっと親睦を深めてきたと思っていた。だがメルローデの両親が死ぬと同時に、彼らの中でも何かが壊れたのだろう。シモーヌは元来王妃が平民の出だということで、冷たい態度で接することがたびたびあった。だがここまで非道な手に出るほど愚かな真似をする人とは気づけなかった。エドガーだけが、何も知らない。母親が罪に手を染めていることを知らないのは、母親が護ろうとしている息子だけなのだ。
「いいえ。私は平気だわ。それより、あなたに話さなくてはならないことがあって…」
「――リオウのことか?」
「!」
 メルローデが息を呑むと、エドガーは口元をゆがめた。
「ゆうべの一件で、おまえを助けたのはリオウだと聞いている。…おまえはそれで、俺を切るつもりなのか?」
「切るだなんて…! 私は…、私は、リオウにこれからも傍に居て欲しいと思っただけだわ」
「それを切ると言うのだ。…俺を捨ててあのような男を選ぶとは。母親の血は隠せぬか?」
「…!」
 メルローデはかっと目を開き、エドガーをにらみつけた。
「あなたがそんなことを言う人だったなんて!」
「事実であろう。お前がそのつもりでも、俺の気持ちは変わらんぞ。最初から俺はそうやってお前を抱いてきた。これからもだ」
「あなたが変わらないというなら、私が変わるわ。もしまた私の寝室に無理やり押し入ろうとしたら、私はその場で命を断つ。これ以上あなたの好きにはさせない!」
「っ!」
 エドガーはメルローデの気迫に押され、一瞬身動きが取れなかった。力でねじふせるのはたやすいことだと軽く見ていた相手に牙を向かれ、屈辱とほのかな畏怖の念が胸中をよぎる。エドガーはそれを悟られまいと、ぐっと背筋を正した。
「…よかろう。お前がそういうつもりなら、俺は別の方面から手を打つ。俺は簡単に、お前を手放したりはせんぞ」
 メルローデはぎくりとした。エドガーが動けば、真実がおのずとわかってしまうだろう。エドガーは知らずに火の中に飛び込もうとしている。それを止められるのはメルローデだけだ。だがそうしたところで、ふたりの関係は変わらない。メルローデはリオウを選んだ。この選択をしたからには、もう後へは引けない。
「俺を止められるか?」
 エドガーは不適に笑った。
「…止めないわ」
 メルローデはエドガーの予想とは違った表情で首を振った。
「なんだと?」
「私は、ただ見守るだけ。あなたに待ち受けている全てのことを、ただずっと、見守っているわ」
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リオウルート1

「リオウ!?」

 月明かりの中に浮かび上がっても拭えない漆黒の闇が、背を向けて立ちはだかった。月を暗雲が覆い隠し、一凪の風がランプの炎を吹き飛ばす。メルローデの部屋は完全な夜に溶け込んだ。

「ほう? 珍客だな」

 侵入者が面白そうに軽口を叩く。メルローデはその声を聞いてはっとした。
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エドガールート・完

 メルローデが襲われた一件は、噂が広まる前に、エドガーたちが鎮圧化し、表ざたになることはなかった。メルローデは、絶対にカインにだけは知らせないよう頼み込んだので、カインはこのことを知らない。
 だがメルローデの身近な者たちの耳には嫌でも入り、翌日、メルローデが客室から出てくると、そこには見知った顔が並んでいて、メルローデを驚かせた。
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エドガールート2

 シモーヌはその晩、息子をたぶらかす王女の命の灯火を吹き消した喜びに、ひとり祝杯をあげていた。
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エドガールート1

「エドガー!」
 黄金の髪を振り乱し、メルローデに背を向けて立ち尽くす男の姿を見上げて、メルローデは信じられない思いでいた。
「おのれ、ここをどこだか知っての狼藉か!」
 エドガーは怒気を孕んだ声で一喝すると、しゅるりと鞘から剣を抜き放った。
 黒い塊がわずかに動揺し、後退する。エドガーの後ろからメルローデが顔を出すと、薄暗い照明のともる室内で、黒い塊は徐々にその全貌を浮かび上がらせた。
「今日は分が悪いようだな」
 軽く肩をすくめ、大して残念がりもせず言ってのけたその声を聞き、メルローデははっと息を呑んだ。

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リオウ×姉上×エドガー

「姉上?」
 カインは、扉の前でためらうように立ち尽くす姉の姿を見て、眉をひそめた。
「あ…」
 メルローデははっと我に返り、カインに微笑んでみせる。
「ごめんなさい。ぼんやりしてしまって」
「大丈夫? まだ、体調が…」
「ううん、違うのよ。…こんなことじゃいけないわね。さぁ、行きましょう」
 メルローデは自分に言い聞かせるようにそう言うと、扉を開いた。
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エドガーvsリオウ

カインの髪に風が運んだ木の葉が絡んだ。カインは慌てて乱暴に髪に手を当てる。そんなことをしてはますます葉が隠れてしまうのに。そう思っていると、そっとその手を押さえ、頼りないほっそりとした指が、隠れた木の葉をつまみあげた。カインはわずかに赤くなり、その相手に顔を近づけ何事か囁いている。唇の動きは「ありがとう」と形作られている。何故かそれに安堵した。親密すぎるほど寄り添うふたりの姿は、ぱっと見とても姉弟には見えない。姉は必要以上に弟を気遣い、弟はそれを当然の如く受け入れ、なんとも幸福な笑みを浮かべるのだ。平静で見てなどいられない。
 エドガーは眉をひそめてそんなふたりをバルコニーから見下ろしていた。
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リオウ×姉上

「…姫、もうお加減はよろしいのですか」
「ええ、ジークの薬のおかげね」
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エドガー×姉上

「…姉上?」
「なに? カイン」
カインが襲撃された日から十日ほど経った日の朝、いつものようにメルローデの部屋の扉を開けて入ってきたカインは、メルローデを見て眉根を寄せた。
「…どうしたの? 顔色、よくないよ」
「え…そ、そう? 私は元気よ、心配しないで」
メルローデは笑って首を振った。カインと共に廊下を歩きながら、自然と拳を握り締める。

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