用心棒・12005-10-30 Sun 17:52
「手はずはどうだ」
闇夜に濡れる城の奥深く、密談交わすはふたつの影。ゆらゆらと、その計画がどちらへ転ぶか決めかねるようにゆらめく蝋燭の明かりの中で、ひとつの影がこそりと囁く。 「ぬかりはございませぬ」 答えるは、一目見ただけで赤子も泣き出すような、善悪の悪のみで形成されたような黒の塊である。いやよく見れば、塊には人間にあるべく目鼻がついているのだが、蝋燭の明かりも、それを照らすことを快く思わぬらしい。明かりの元にいても暗がりを覗き込むような気持ちにさせられる、不快な男がにやりと笑みを浮かべた。 「失敗は許さぬ。よいな?」 「心得ておりますれば」 頭を下げた闇の男は、しかしと、顔をあげる。 「上様も、恐ろしい計画を立てなさるものだ」 「言うな、わしとて辛いのよ」 そう言いながら楽しげに扇子をあおる。夏の夜は涼やかな風を障子の隙間から運んでくるが、彼らの密談の前では熱と化して届かぬと見える。蝋燭の炎が煽られ大きく傾いた――ひときわ明るく照らし出されたその男は、にやりと口元を上げて見せた。 「真貴子も死に、最早わしを止められる者はおらぬ」 正妻の名を愉快そうに口に乗せ、更に男の笑みは深くなる。扇子をぱちりと閉じ、とんと頭を畳に置いた。 「勝代の子をわしの世継ぎとするためには――」 「上様」 闇の男は鋭くそれを遮った。小さく辺りを窺う。言われた男は扇子を持ち上げ、女人のように、分厚い唇に当てて見せた。 「わしとしたことが」 「案ずることはありませぬ」 闇の男は深く首を垂れた。 「この鋭治郎(えいじろう)、必ずや仕留めてみせましょう――」 ふたつの影がくつくつと揺れる。さながらそれは、蝋燭の火のように。 |
くすり指2005-10-25 Tue 23:27
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俺と相棒2005-10-25 Tue 23:25
内藤様の企画『Mystery Circle』の6回目から参加させて頂くことになりました。
受けたお題最初と最後の文から小説を書くという企画です。 皆様それぞれ素晴らしい作品を書いていらっしゃるので、微力ながら宣伝も兼ねて、こちらにも自分の作品を置いておきます。 |
笹ヤコ32005-10-15 Sat 01:00
旅行から帰った弥子は、探偵事務所に差し入れと共に現れた笹塚を見て、「腐蒲温泉名物ダチョウの温泉卵饅頭」をくれた。正直どうかと思った。持って帰るには大きすぎ、食べる前に満腹になりそうで、一瞬ネウロの入れ知恵かと思ったほど、嬉しくない土産物だった。げっそりしながら異様に大きい箱を抱えている笹塚に、弥子は旅行先の事件のことを話して聞かせる。
「なんか…今回も、大変だったみたいだね」 テーマ:自作小説(二次創作) - ジャンル:小説・文学 |
アレン×セレナ2005-10-09 Sun 20:07
――結婚が、決まったわ。
おめでとうございます。 ――アレン、わたくしは…! フレイド公王はご立派な方です。あなたを、幸せにしてくださるはずです。 ――そんな言葉を、わたくしが望んでいると思って? どうかお幸せに、マレーネ姫。 ――アレン… あなたの幸せを、いつでも祈っております。 ――あなたは、それでいいのね? ……はい。 ――アレン、愛していたわ。あなたは、わたくしの全てだった。 …お幸せに。 ――あなたも。 |
物語を語ろう・242005-10-04 Tue 01:19
昨夜は雨が降った。
ぬかるんだ土の上を駆けていくのは、予想以上に体力を消耗する。 体重をかけるたびに底なし沼のようにずぶずぶとのめりこむ足を引き上げ、娘は大きく口を開けて走っていた。 「はぁっ、はぁ…っ、ふ…っ」 くらり、と目の前が霞み、前のめりになる。 どこまで走ったのかわからない。方向も確認せず走っていたから。 両腕を回して体勢を整える。粘土のように柔らかな土が、大きく溝を作った。 「待てこらああああっ!」 |
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